2026.09.24 公開

常用工事の請求書の作り方|出面から請求までの流れと、揉めないための実務

「先月の請求、人工が3つ多くないですか」。月初にこの電話がかかってくる会社は、少なくありません。そして厄介なことに、どちらが正しいのか、その場では誰にも分からないことがあります。元請けの記録と、こちらの出面表が違う。突き合わせに半日かかる。結局1人工分を値引きして終わる。

前回は出面表のExcel管理を扱いました。今回は、その集計した人工を、どうやって請求金額に変えるのかを整理します。先に結論を書きます。常用の請求で揉める原因は、請求書の書き方ではありません。数量の合意プロセスがないことです。

そもそも「常用」とは何か

用語を整理します。建設業の契約は、大きく2つに分かれます。

請負契約仕事の完成に対して対価を支払う契約です。「この配管工事一式を◯◯円で」という形になります。何人で何日かかったかは、原則として金額に影響しません。早く終われば利益が増え、長引けば減ります。

常用契約(じょうよう)投入した労務に対して対価を支払う契約です。「1人工あたり◯◯円で、必要な日数だけ」という形になります。

つまり、請負 → 成果物に対して払う、常用 → 人工に対して払う、という違いです。常用は「手間請け」「人工出し」とも呼ばれます。応援を出す・受ける関係や、工程が読みにくい工事で使われることが多い形態です。

そして常用では、出面表がそのまま請求書の根拠になります。人工の数が1つずれれば、請求額が単価分ずれる。ここが請負との決定的な違いです。

出面から請求書までの5ステップ

ステップ1:日々の人工を記録する

誰が・どの現場に・何人工入ったか。前提となる記録です。このとき、元請け側の記録と自社の記録が別々に存在している状態が、後の揉め事の種になります。

ステップ2:月次で集計する

現場別・作業員別に集計します。工事番号で集計するのが確実です。現場名で集計すると、表記ゆれで数字がずれます。

ステップ3:元請けと数量を合意する ★最重要

ここが抜けている会社が非常に多いです。請求書を出す前に、「今月は◯現場に◯人工でしたね」という確認を取る。この一手間があるかないかで、月初の電話の有無が決まります。具体的には、月末締めの翌営業日に、集計表(出面表の写し)を先に送る、相違があれば請求書を作る前に潰す、合意が取れてから請求書を発行する、という順序です。請求書と一緒に出面表を送るのでは遅いです。請求書が出た後の修正は、双方にとって手間になります。

ステップ4:単価を掛けて金額を出す

合意した人工数に、契約単価を掛けます。このとき注意すべきは、単価が複数ある場合です。職種による単価差(配管と電気で違う)、時間帯による差(夜間・休日)、経験年数・資格による差(職長手当など)。これらがある場合、出面の記録段階で職種区分を持たせておかないと、後から分けられません。集計してから「これは職長だった」と思い出すのは困難です。

ステップ5:請求書を発行する

記載事項は次の項目で整理します。

常用の請求書に記載する項目

インボイス制度で必要な記載事項

適格請求書として認められるには、以下の記載が必要です。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称、および登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 交付を受ける事業者の氏名または名称

登録番号の記載漏れは、実務で最も多いミスです。請求書のテンプレートに固定で入れておいてください。

常用の請求書で、追加で入れるべき項目

上記に加えて、常用では以下を明記しておくと揉めません。

明細の書き方

一式でまとめず、現場ごと・単価ごとに行を分けてください。

一式でまとめると、元請け側で工事別の原価に振り分けられません。先方の経理を困らせる請求書は、支払いが遅れる原因にもなります。

揉めないための3つの実務

①出面表を、請求書より先に出す:前述のとおりです。確認の順番を変えるだけで、月初の電話は大幅に減ります。

②人工の刻みルールを、契約時に握る:0.5人工とするのは何時間までか。残業は人工に含めるのか、別途時間給か。移動時間はどう扱うか。これを契約時に文書で確認していない会社が、非常に多いです。「業界の慣習で」で済ませていると、月末に解釈が割れます。契約書に書けない場合でも、メールで一度確認して記録を残しておくだけで、後の証拠になります。

③現場の記録を、元請けと共有する:理想は、日々の出面が双方から見える状態にすることです。月末にまとめて突き合わせるから差異が出ます。日次で見えていれば、その日のうちに解決できます。紙とLINEで運用している限り、これは難しい部分です。会社をまたいで日報や集計を共有できる仕組みがあれば、突き合わせ作業そのものがなくなります。

常用の請求で揉める原因は、請求書の書き方ではなく、数量の合意プロセスがないことです。

よくある質問

Q. 常用と請負、どちらで契約すべきですか?
A. 工事の性質で選びます。工程と数量が読める工事は請負、応援や工程が読みにくい工事は常用が向きます。

Q. 常用の単価には何が含まれますか?
A. 会社によって異なります。工具・消耗品・車両費・駐車場代を単価に含めるのか、別途請求するのか。ここも契約時に合意しておかないと、月末に揉めます。特に高速代と駐車場代は認識がずれやすい項目です。

Q. 請求書は月末締めでよいですか?
A. 元請けの締め日に合わせるのが基本です。20日締めの会社も多く、自社の集計サイクルと合っていないと、月をまたいだ集計作業が発生します。契約時に確認してください。

Q. 出面表は請求書に添付すべきですか?
A. 添付そのものより、請求書より先に送って合意を取ることが重要です。添付は「証拠を付けた」に過ぎず、相違があれば結局やり直しになります。

Q. 常用の請求書に消費税はかかりますか?
A. かかります。常用は役務の提供であり、課税取引です。税率ごとに区分した記載が必要になります。

まとめ

出面から請求までの流れを整理したい、突き合わせ作業を減らしたいといったご相談も承っています。

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