2026.09.21 公開

建設業のDXが進まない本当の理由|アプリを導入した企業の62.5%が、いまもExcel中心

「うちもそろそろDXしないと」。そう言って施工管理アプリを導入した会社が、半年後にどうなっているか。多くの場合、Excelが消えていません。

前回は人手不足を数字で見ました。今回は、その解決策とされる「DX」が、なぜ現場で止まるのかを扱います。

結論から書きます。ツールを入れることと、業務が変わることは、別の話です。

まず、数字で現状を確認します

現場TECHが2026年3月に実施した調査(建設業従事者426名)によると、施工管理アプリの導入率は31.9%(未導入68.1%)。主な管理手段は「Excel等のPCソフト中心」が68.5%で最多、「クラウド型施工管理アプリ中心」は8.5%にとどまります。紙・手書き中心も12.7%です。

そして最も重要な数字がこれです。前回調査では、ツールを導入した企業でも62.5%が依然としてExcel中心でした。

出典:「施工管理DX実態調査」(現場TECH https://kensetsu.gemba-tech.jp/

「導入した」と「変わった」は違う

導入率31.9%という数字だけを見ると、「3社に1社は進んでいる」と読めます。しかし同じ調査で、主な管理手段としてアプリを挙げた企業は8.5%しかいません。導入率31.9%との差、約23ポイントは何か。

アプリを持っているが、主軸はExcelのままという企業です。デジタル化の進捗を5段階で聞いた設問でも、「5(十分に進んでいる)」と答えた企業は1.6%でした。

なぜExcelが消えないのか

理由は3つあると考えています。

①アプリが電子化するのは「入力」だけ

これがこの連載で繰り返し書いてきた点です。日報の運用を分解すると、書く/回収する/読み取る/データに転記する/現場別・作業員別・工事別に集計する/協力会社の請求と突き合わせる/請求明細を作る、という7つの工程になります。

多くのアプリが電子化するのは1と2、そして3の一部です。4〜7が残れば、そこにExcelが必要になります。アプリからCSVを出して、Excelで集計する。この瞬間、Excelは消えません。

②会社をまたぐと、紙とLINEに戻る

建設業は多重下請け構造です。日報は本来、会社の壁を越えて流れる情報です。ところが多くのアプリは自社内で完結する設計になっています。すると、自社の作業員はアプリ、協力会社の作業員は紙かLINE、元請けへの提出は紙かExcel、となります。アプリと紙の二重管理になり、結局Excelで統合することになります。

③請求と原価は、別のソフトにある

工数の集計はアプリ、請求書は会計ソフト、原価管理はExcel。3つに分かれていると、間をつなぐのは必ず人の手作業です。そしてその作業場所がExcelになります。

導入した企業が、乗り換えを考える理由

調査では、アプリ導入済みで乗り換えや追加導入を検討している企業(39件)の理由も聞いています。

理由割合
操作性に課題がある46.2%
他システムとの連携に課題がある28.2%
必要な機能が不足している25.6%
機能が多すぎて使いこなせない25.6%
現場への定着が進まない23.1%
費用対効果が見合わない18.0%

出典:「施工管理DX実態調査」(現場TECH https://kensetsu.gemba-tech.jp/

「機能が不足している」と「機能が多すぎる」が、同率で並んでいます。これは矛盾ではありません。必要な機能がなく、不要な機能が多いという状態です。自社の業務に合っていない、ということを意味します。

導入していない企業が、止まっている理由

未導入企業(290件)の理由も見てみます。

理由小規模中規模大規模
現場への定着に不安がある46.4%47.1%31.6%
コストが高いと感じている32.1%44.7%29.4%
現在の運用で十分だと感じている28.6%20.0%30.5%
導入検討の担当者がいない14.3%21.2%27.1%

出典:「施工管理DX実態調査」(現場TECH https://kensetsu.gemba-tech.jp/

「現場への定着に不安がある」が、小規模・中規模でいずれも最多です。つまり、導入していない企業は定着しないことを恐れて止まっており、導入した企業は実際に定着しないことに悩んでいる。入口も出口も、同じ理由です。

導入していない企業は「定着しないことを恐れて」止まり、導入した企業は「実際に定着しないこと」に悩んでいる。入口も出口も、同じ理由です。

企業規模で状況がまったく違う

もう1つ、見逃せない数字があります。小規模企業(〜49人)の導入率は1割未満。一方、大企業(300人以上)は約7割。最大で60ポイントの差があります。

「建設業のDXは進んでいない」とひとくくりに語られがちですが、実態は規模による分断です。そして小規模企業の未導入理由は、中堅以上とは違います。「現在の運用で十分」が比較的多く、「導入検討の担当者がいない」も一定数あります。体制の問題であって、意欲の問題ではありません。

負担が大きい業務は何か

同じ調査で、業務負荷が高い作業の上位はこうでした。

  1. 関係者との連絡・調整(17.4%)
  2. 日報・報告書作成(16.0%)
  3. 写真管理(15.7%)
  4. 工程管理(12.4%)
  5. 安全書類・検査対応(10.8%)

日報・報告書の作成が2位に入っています。ただし注意すべきは、この設問は「作成」であって「集計」ではないという点です。現場が感じている負担が日報作成であり、事務所が感じている負担はその後の集計です。同じ日報という業務でも、誰に聞くかで課題が変わります。ツールを選ぶときは、両方を見る必要があります。

失敗しないための5つの確認

調査結果から逆算すると、確認すべきことははっきりしています。

①集計まで自動化されるか
7工程のうち、いくつが自社に残るか。CSVを出してExcelで加工するなら、Excelは消えません。

②入力が何タップで終わるか
乗り換え理由の1位は操作性(46.2%)です。デモでは必ず、実際の現場名と作業員名で1件入力させてもらってください。

③機能が自社の業務に合っているか
「多すぎる」も「足りない」も同じ問題です。多機能だから良いわけではありません。

④会社をまたげるか
協力会社の日報が紙のまま残るなら、二重管理は解消しません。

⑤1現場・1ヶ月で試せるか
全社一斉導入は失敗します。小さく始めて、月末の集計まで1サイクル回してから判断してください。

よくある質問

Q. 小規模な会社でも、アプリを導入する意味はありますか?
A. 現場数と協力会社の数で判断してください。同時進行の工事が3件以下、協力会社3社以下なら、Excelの運用を整える方が費用対効果が高い場合があります。逆に、集計に月20時間以上かけているなら、その人件費と比較する段階です。

Q. 「現在の運用で十分」という判断は間違っていますか?
A. 間違いではありません。ただし、その判断が「担当者1人が回せているから」に依存していないかは確認してください。その人が辞めた瞬間に、十分ではなくなります。

Q. 導入したのに現場が使ってくれません。
A. 原因は意欲ではなく設計であることがほとんどです。入力項目に自由記述が多い、1件の入力に3分以上かかる、紙の様式と並びが違う。このいずれかに該当していないか確認してください。

Q. 多機能な製品と、シンプルな製品のどちらを選ぶべきですか?
A. 自社の課題が明確なら、シンプルな方が定着します。調査でも「機能が多すぎて使いこなせない」が乗り換え理由の上位(25.6%)に入っています。使わない機能に払う費用と、覚える負担は、どちらも実在するコストです。

Q. DXという言葉が大きすぎて、何から手をつければいいか分かりません。
A. 「DX」を「事務作業を月◯時間減らす」に置き換えてください。目標が時間になると、何を測ればいいかが決まります。まず現状の集計時間を1ヶ月計測することから始めるのが確実です。

まとめ

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