協力会社の請求確認を楽にする3つの方法|突き合わせに半日かかる状態をなくす
月初の3日間、事務所の机の上に請求書が積み上がる。協力会社が10社あれば、10通。それぞれ様式が違い、粒度も違う。「常用工事 一式」としか書かれていないものもある。自社の出面表と1件ずつ突き合わせて、合わないものは電話で確認する。これだけで半日から1日が消えます。
前回は請求する側の話でした。今回は逆の立場、請求書を受け取る元請け側から見た突き合わせ作業を扱います。結論を先に書きます。突き合わせが大変なのは、記録が2つ存在するからです。そして、この作業は3段階で減らせます。
なぜ突き合わせに時間がかかるのか
①記録が2つ存在している
自社の現場で誰が何人工入ったかは、自社の日報にも記録されています。協力会社も、自社の出面表を持っています。同じ事実について、2つの記録が別々に作られている。これが構造的な原因です。2つある以上、差異は必ず出ます。記憶違い、記入漏れ、解釈の違い。どちらかが悪いわけではなく、避けられない現象です。
②粒度が揃っていない
届く請求書の書き方がバラバラだと、比較そのものに時間がかかります。「常用工事 一式 450,000円」としか書かれていない、現場名の表記が自社と違う(「◯◯マンション」vs「◯◯MS新築工事」)、複数現場がまとめられていて現場別に分解できない、人工数が書かれておらず金額だけ。一式で届いた請求書は、そもそも突き合わせができません。電話で聞き取るところから始まります。
③確認のタイミングが遅い
月初にまとめて突き合わせるため、対象が1ヶ月前の出来事になっています。「8月3日、山田さんは半日で上がったはずですが」と聞かれても、現場の記憶は曖昧です。結局、双方の記録を信じるしかなく、水掛け論になります。
方法1:請求書の粒度を、先に指定する
最も手軽で、効果が大きい方法です。協力会社に、請求書の様式を指定してください。
指定すべき項目
- 工事番号と現場名(自社の工事番号を使ってもらう)
- 対象期間
- 現場ごとに行を分ける
- 人工数(0.5などの端数も明記)
- 単価(職種別に分けている場合は職種名も)
- 作業員名または人数
「お願い」ではなく、取引条件として伝える
ここが重要です。「できればこの形でお願いします」では、半年後には元に戻っています。取引を始めるときの条件として、最初に伝えてください。既存の取引先に対しては、単価改定や契約更新のタイミングが切り出しやすいです。
テンプレートを配る
言葉で伝えるより、Excelのテンプレートを渡す方が確実です。自社の工事番号と現場名をあらかじめ入れたものを配れば、表記ゆれも同時に解消します。協力会社にとっても、作成が楽になります。これだけで、突き合わせ時間は目に見えて減ります。費用はかかりません。
方法2:確認の順番を変える
次に効くのが、タイミングの前倒しです。
締め日の前に、自社の集計を送る
請求書が届いてから確認するのをやめます。
- 締め日の数日前に、自社の日報から協力会社別の集計を出す
- 「当社の記録では、今月は◯現場に◯人工でした」と先に送る
- 相違があれば、この時点で解決する
- 合意した数字で請求書を出してもらう
届いた請求書を直してもらうのと、出す前に確認するのとでは、双方の手間がまったく違います。請求書の差し替えは、協力会社側にとっても面倒な作業です。関係悪化の小さな種にもなります。
この順番に変えるだけで、月初の突き合わせが「確認済みの数字の照合」になる、電話での聞き取りがほぼなくなる、支払いが遅れない、という効果があります。コストはゼロで、明日から実行できます。
方法3:記録を1つにする
根本的な解決は、ここです。2つの記録が存在する限り、差異は構造的に発生し続けます。方法1と2は差異を早く見つける手段であって、差異そのものをなくすものではありません。
日次で、双方が同じ数字を見る
理想は、協力会社の作業員がその日のうちに人工を入力し、元請けもリアルタイムでそれを見られる状態です。こうなると、月末に突き合わせる対象がない(すでに合意済み)、差異があってもその日のうちに解決できる、請求書は合意済みの数字から自動的に作られる、という状態になります。紙とLINEで運用している限り、これは実現できません。会社をまたいで日報や集計を共有できる仕組みが必要になります。
導入時の現実的な注意点
「協力会社にシステムを使ってもらう」は、簡単ではありません。協力会社側に費用負担が発生するか、協力会社が複数の元請けと取引している場合、元請けごとに別システムを使うことになるのか、現場の作業員が入力できる設計になっているか。このあたりを確認せずに導入すると、協力会社が使わず、結局紙が残ります。検討する際は、協力会社側の負担がどうなるかを必ず確認してください。
差異が出やすい5つのポイント
突き合わせで実際に食い違うのは、だいたい次の5つです。チェックリストとして使ってください。
①半日・残業の刻み:4時間で0.5とするのか5時間なのか。残業を人工に含めるのか時間給で別計算か。双方でルールが違うと毎月ずれます。
②現場の掛け持ち:午前A現場・午後B現場の日。協力会社は「1人工」でまとめ、元請けは現場別に0.5ずつ記録している、というズレが起きます。
③応援の付け替え:急遽別現場に応援に行った日。現場側の記録が更新されていないことがあります。
④締め日のズレ:元請けが20日締め、協力会社が月末締め、というケース。月をまたぐ分の扱いで毎月混乱します。契約時に揃えておくべき項目です。
⑤単価改定の適用時期:単価を変えた月の扱い。「今月分から」なのか「来月分から」なのか。口頭で決めていると必ず揉めます。
突き合わせを放置すると何が起きるか
「多少の差異は飲んでいる」という会社もあります。ただし、コストは差額だけではありません。
原価が確定しない:協力会社への支払額が確定しないと、工事ごとの原価が出ません。原価が出なければ、その工事が儲かったのかが分からないまま次の工事が始まります。
支払いが遅れる:確認に時間がかかると、支払サイトが実質的に伸びます。協力会社の資金繰りを圧迫し、関係が悪くなります。人手不足の中で、これは無視できないリスクです。
過払いに気づかない:差異は常に一方向とは限りません。突き合わせが甘い会社ほど、過払いも見逃しています。
人手による工数集計にかかる時間は月20時間以上(自社調査)。突き合わせはこの時間のかなりの部分を占めます。
よくある質問
Q. 協力会社に請求書の様式を指定してもよいのですか?
A. 取引条件として事前に合意していれば、一般的な商慣習の範囲です。ただし、一方的に過大な事務負担を課すような形は避けるべきです。テンプレートを配布し、作成が楽になる形で提案するのが実務的です。
Q. 協力会社が小規模で、Excelも使えない場合は?
A. 紙でも構いません。重要なのは粒度であって形式ではありません。現場ごとに人工数が分かれていれば、手書きでも突き合わせはできます。様式を配って、そこに書き込んでもらう形が現実的です。
Q. 差異が出たとき、どちらの記録を優先すべきですか?
A. 契約時に決めておくのが最善です。決めていない場合、現場で記録された一次情報(現場の入場記録、日報)が判断材料になります。ただし双方が一次情報を持っているため、事前合意がないと結論が出ません。
Q. 締め日は揃えるべきですか?
A. 揃えられるなら揃えてください。締め日が違うと、月をまたぐ分の集計が毎月発生します。新規の取引から順次揃えていくのが現実的です。
Q. まず何から始めるべきですか?
A. 方法2(確認の順番を変える)です。費用がかからず、今月から実行できます。効果を確認してから、方法1の様式統一に進むのが進めやすい順序です。
まとめ
- 突き合わせが大変なのは、同じ事実について記録が2つ存在するから
- 方法1:請求書の粒度を指定する。テンプレートを配るのが確実
- 方法2:確認の順番を変える。締め日前に自社の集計を先に送る。コストゼロで今月から実行可能
- 方法3:記録を1つにする。日次で双方が同じ数字を見る状態を作る
- 差異が出やすいのは、半日・残業の刻み/掛け持ち/応援の付け替え/締め日のズレ/単価改定の時期
- 放置すると、原価が確定せず、支払いが遅れ、過払いにも気づけない
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